犬がふうとうなつて戻つてきました。
そしてうしろからは、
「旦那だんなあ、旦那あ、」と叫ぶものがあります。
二人は俄にはかに元気がついて
「おゝい、おゝい、こゝだぞ、早く来い。」と叫びました。
簔帽子みのばうしをかぶつた専門の猟師が、草をざわざわ分けてやつてきました。
そこで二人はやつと安心しました。
そして猟師のもつてきた団子をたべ、途中で十円だけ山鳥を買つて東京に帰りました。
しかし、さつき一ぺん紙くづのやうになつた二人の顔だけは、東京に帰つても、お湯にはひつても、もうもとのとほりになほりませんでした。