ベスは、心待ちに、待ちましたが、その日も、つぎの日の朝も、なんの返事もありません。きっと老人をおこらせたのだと、ベスは心配しはじめました。けれど、その日の午後、ベスがちょっとお使いに出た帰りに、思いがけないことが起りました。ベスが家のちかくまで来たとき、四つの頭が客間の窓から、見え、たくさん[#「たくさん」は底本では「たんさん」]の手がふられ、いっせいにさけぶ声が耳をうったのです。
「ローレンスさんから御返事よ!」
ベスは胸をとどろかせながら、いそいで帰って来ました。すると、姉妹たちは扉口のところに待っていて、ベスをつかまえ、わいわいいいながらかついで、客間へつれていきました。
「ほれ、あれよ!」と、みんなが、ゆびさすほうを見たとき、ベスはうれしいのと、おどろいたのとで、まっさおな顔色になりました。ああ、そこには、小さなキャビネット・ピアノがおいてあって、ぴかぴかしたふたの上に「エリザベス・マーチさん」にあてた手紙がのっていました。
「あたしに?」と、ベスはジョウにつかまり、たおれそうな気がしながら、あえぐようにいいました。ジョウは、手紙をわたしながら、
「そう、あんたによ、いい方ね、世の中で一ばんいいおじいさんね、かぎも手紙のなかにあるわ。」といいました。