「おかあさん、あたしローレンスのおじいさんに、スリッパを一つ、つくってあげたいの。あたしお礼をしたいんだけど、ほかにどうしていいかわからないんです。」
おかあさんは、にっこり笑って、
「ええ、ええ。つくっておあげなさい。きっとおよろこびになるでしょう。みんなも手伝ってくれるでしょうし、かかるお金は、おかあさんが出してあげますよ。」と、いいましたが、おかあさんは、ベスがめったにおねだりをすることがないので、今、ベスの望みをかなえてやるのを、とくべつうれしく思いました。
ベスは、メグやジョウと相談して、型をえらび、材料をととのえて、スリッパをつくりはじめました。紫紺の布地に、しなやかな三色すみれの花をおいたのが、たいそうかわいいと、みんながいいました。ベスは、手が器用でしたし、ほとんど朝から晩までかかりきりでしたから、まもなくできあがりました。それから、ベスはごくみじかい手紙を書き、ローリイに頼んで、ある朝、老人がまだ起きないうちに、こっそり書斎のテーブルの上に、スリッパといっしょに、のせておいてもらいました。